復讐の暗殺者、完璧なる護衛者、贖罪を求める工作員。裏社会で己の美学に従って生きる一筋縄ではいかない超一流たちが、知力、魅力、そして殺しのスキルを駆使して、プライドを懸けた戦いを繰り広げる。『ジョン・ウィック』製作スタジオと、『007』監督の最新作となる『マーベラス』は、バイオレンスな殺し屋の世界と、世界を股にかける洗練されたスパイの世界がスタイリッシュに融合したキリングアクションだ。
 監督は“007シリーズ”の中でも傑作と称される『007/カジノ・ロワイヤル』『007/ゴールデンアイ』の2作品を手掛けたマーティン・キャンベル。ピアース・ブロスナン、ダニエル・クレイグの、2人のボンドの初作品を請け負った手腕を存分に発揮して、イギリス、ルーマニア、ベトナムなど世界を舞台に、プライドと美学を持ったプロッフェショナルたちの戦いをスタイリッシュに描き出した。
 そして、稀代のアクション職人の世界観を実現するために、3人のプロッフェショナルな俳優陣が集結。豹の様な身体能力と美貌、窮地で輝きを増す冷徹な判断力と精神力をみせる復讐の暗殺者アンナに、マギー・Q。『ミッション:インポッシブル3』『ダイハード4.0』で見せた切れ味鋭いアクション能力を開放して、タフなヒロイン像をつくりだした。アンナの前に立ちふさがる完璧なセキュリティ、レンブラントに、『スパイダーマン:ホームカミング』のマイケル・キートン。全てを見透かした様な柔らかな物腰でアンナに接近する底の知れない男を、アカデミー賞ノミネートの演技力に、ハードなアクションも加えて体現している。そして、アンナを一流の暗殺者に育て上げる老獪な工作員、ムーディには、サミュエル・L.ジャクソン。非情な世界に生きる中で、最後の贖罪を求める複雑なキャラクターを演じている。
裏社会で長年トップクラスの暗殺成功率を誇ってきたアンナ(マギー・Q)とムーディ(サミュエル・L.ジャクソン)。師弟コンビとして親子の様な絆で結ばれた二人だったが、ある日、ムーディが何者かに惨殺されてしまう。復讐に乗り出したアンナの前に現れたのは、ターゲットの護衛を請け負ったプロのセキュリティ、レンブラント(マイケル・キートン)だった。敵対関係のはずのアンナに、意外にもソフトな物腰で迫る、底知れない魅力を持ったレンブラント。復讐に燃える暗殺者vs完璧を追求するセキュリティ。超一流の知力とスキルを駆使した戦いには、予測不可能な結末が待っていた・・・
アンナ/マギー・Q MAGGIE Q
1979年ハワイ生まれ。ポーランド・アイルランド系米国人の父と、ベトナム人の母の間に生まれ、モデルとしてアジア各国で活躍の後、1999年に台湾のTVドラマで俳優デビューした。2006年に『ミッション:インポッシブル3』でハリウッド本格デビューを果たし、2007年には『ダイ・ハード4.0』に出演して、アクション女優としての評価を高めた。2010年、TVドラマ『NIKITA/ニキータ』に主役のニキータ役で2013年の第4シーズンまで出演した。その他の作品に『彼が二度愛したS』(08)、『ダイバージェント』シリーズ(14~16)、『Mr.&Mrs.フォックス』(18)などがある。
レンブラント/マイケル・キートン MICHAEL KEATON
1951年アメリカ・ペンシルバニア生まれ。大学を中退後、スタンダップ・コメディアンとして活動の後、1982年に『ラブ IN ニューヨーク』で映画デビューを果たす。1988年にティム・バートン監督の『ビートルジュース』で人気を高め、翌年『バットマン』のブルース・ウェイン役でスターとなった。その後、『ザ・ペーパー』(94)、『ジャッキー・ブラウン』(97)、『アウト・オブ・サイト』(98)など数々の作品に出演、2014年には『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』でアカデミー主演男優賞にノミネートされた。近年では『スパイダーマン:ホームカミング』(17)で演じたヴィラン、バルチャー役で知られ、『モービウス』(22)にも同じキャラクターで登場している。その他の作品に『スポットライト 世紀のスクープ』(15)、『シカゴ7裁判』(20)などがある。
ムーディ/サミュエル・L.ジャクソン SAMUEL L. JACKSON
1948年アメリカ・ワシントン生まれ。大学卒業後、俳優を志し1972年に映画デビュー。1988年『星の王子 ニューヨークへ行く』に脇役で出演して以降、『グッドフェローズ』(90)、『パトリオット・ゲーム』(92)、『ジュラシック・パーク』(93)などの大作に、同様の脇役で出演するなど地道なキャリアを歩む。1991年『ジャングル・フィーバー』でカンヌ国際映画祭助演賞を受賞し、1994年には『パルプ・フィクション』でアカデミー助演男優賞にノミネートされ注目を集め、1995年『ダイ・ハード3』で人気を不動のものとした。以降は、『スター・ウォーズ エピソード1~3』(99・02・05)、『アベンジャーズ』シリーズ(12~)をはじめ、枚挙にいとまがないほどの数々のヒット作に出演を続けている。
監督:マーティン・キャンベル
1943年ニュージーランド生まれ。1966年に、イギリスに移住して撮影監督からキャリアをスタートさせ、1978年、TVシリーズ『特捜班CI-5』で監督デビューした。その後、イギリス国内でTVシリーズの監督として高い評価を受け、1989年『クリミナル・ロウ』でハリウッドデビューを果たした。1995年には、ピアース・ブロスナン初のジェームズ・ボンド役となる『007/ゴールデンアイ』、『マスク・オブ・ゾロ』(98)、『バーティカル・リミット』(00)など大ヒットを連発した。2006年には、新ボンドとしてダニエル・クレイグを迎えた『007/カジノ・ロワイヤル』を監督した。その他の作品に『すべては愛のために』(03)、『復讐走査線』(10)、『ザ・フォーリナー/復讐者』(17)など。
脚本:リチャード・ウェンク
1956年アメリカ・ニュージャージー生まれ。ニューヨーク大学で映画学の学位を取得し、卒業後すぐにプロダクションの仕事を始めた。1986年『ヴァンプ』の脚本・監督としてデビューを果たし、いくつかの監督・脚本作を経て、2006年、脚本を担当した『16ブロック』で評価を高めた。その後、『メカニック』(11)、『エクスペンダブルズ2』(12)などの脚本を担当し、『イコライザー』シリーズ(14・18)では、脚本と製作で参加している。その他の作品に『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』(16)、『マグニフィセント・セブン』(16)などの脚本を手掛けている。
 『イコライザー』シリーズや『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』で知られるリチャード・ウェンクの脚本が完成した時に、ベトナムの血も流れていて、格闘技の才能もあるマギー・Qが演じるアンナに対抗する、強力なキャラクターを表現できるキャスティングが必要となった。そのため、マイケル・キートン、サミュエル・L.ジャクソンの起用が早くから決められた。撮影現場でマギーと共演した感想をサミュエルが語る。「マギーは凄かったよ。彼女のアクションには、身体的能力に加えて、過去に負った心理的な傷も抱えている姿が感じられた」
 マギーがつけ加える。「相手がサムで良かったわ。すごく自然な流れで撮影に臨むことができて、撮影がとても楽になったからね。師弟や親子の様な間柄でもあるけど、2人は友達でもあるのよ」
 さらにマイケル・キートンとの共演をマギーが語る。「彼は伝説的な俳優よ。私たち2人のキャラクターのやりとりで気に入ったのは、2人が知恵比べをしているところね。アンナはとてもインテリで、彼もそうなのよ。その点で彼は、彼女ほど自分に合う相手に会ったことがないと思うわ。そこが2人の関係の核心部分ね。どちらが相手より優位に立つか、それをどんな方法でやり遂げるのか。まるで絶え間なく続くゲームみたいに、何が起きるか想像ができない。最後まで、誰がどんな決断を下すか分からないのよ」
 アクション主体の本作で、監督のマーティン・キャンベルが、登場人物の人間関係をそこまで気にするとは思っていなかったとマギーは語る。「このような関係をどう築いていくか、彼はとてもこだわっていたわ」
 監督の狙いは、サミュエルがまとめている。「この映画は俳優同士のアンサンブルでできている。それこそが見どころなんだよ」
 このプロジェクトの舵取り役は、マーティン・キャンベルである。『007/カジノ・ロワイヤル』『007/ゴールデンアイ』と、2代にわたるジェームズ・ボンドのデビュー作を手掛けた、稀代のアクション映画監督とのプロジェクトにスタッフ、キャストそれぞれが期待を寄せていた。
 プロジェクトの話を聞いた時、マギーは監督の名前を聞いて、それが“魔法の言葉”だったと語る。アクションジャンルにおいて、彼こそ彼女が求めていたものだった。「この映画では、世界最高のアクション監督と一緒に、自分のキャリアの中でやったことのなかったスタントをすることができたわ」と語る彼女は、撮影前にマーティン・キャンベルと何度もリハーサルができたことをとても気に入っていた。
 これまで数多の作品に出演してきたサミュエル・L.ジャクソンは「マーティンは、先々の段取りを考えながら作業するのが好きなんだ。彼は、シーンでムダのない手順や段取りが完璧であることを常に気を使って確認している。だからカメラをこっちからあっちに動かしても、心の軌跡がフレームの中に完璧に収まるんだよ」と称賛の声をあげている。『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』『エンド・オブ・ホワイトハウス』など、数々のアクション映画に製作として参加してきたプロデューサーのロバート・ヴァン・ノーデンは「撮影現場ではマーティンは、いい意味で暴君です。恐ろしいほど経験が豊富の昔気質の人で、非常に決断力がある司令官のような存在です」と信頼を明かしている。
 本作は、新型コロナウイルスのパンデミックによるロックダウンが起こる前に、イギリスで撮影された最後の映画だった。最初の大規模なロックダウンの1日前に撮影が終了した後、ブルガリアのヌボヤナ映画スタジオで本編が完成された。
イギリスの他の主な撮影地はルーマニアで、首都ブカレストが国際的な大都市であり、脚本に適したロケーションがあったからである。
 ロケで最も興味深い場所のひとつはチャウシェスク邸だ。共産主義者のリーダーであるニコラエ・チャウシェスクと家族の私邸として、四半世紀(1965年~1989年)にわたって使用されていた。
 元共産主義者のリーダーの邸宅での撮影は、ルーマニアの俳優たちにとって強烈な経験だった。
 「チャウシェスク政権下では、宮殿がどこにあるのか知らなかったので、初めてここに来ました。彼のプールのそばで撮影することになるなんて誰が想像できたでしょうか」と、本編で刑事を演じる現地の俳優、チューダー・チリラは語っている。
 1987年のベトナムの繁華街は、ルーマニアの古い織物工場内に再現された。撮影現場には60台のバイク、5~6台の当時の車、ブカレストでは簡単には見つからないアジア系の200人のエキストラ、ベトナムから持ってきた衣装や帽子などが用意された。
 マーティン・キャンベル監督は、ルーマニアの森や湖、そして公園が特に気に入ったといい、現地のスタッフがとても仕事熱心であることを実感したとも語っている。